電力会社を選ぶ基準は人それぞれ。
なかには再生可能エネルギーでつくった電気を買いたいという人もいるはず。
徐々にだが、再エネ比率を高めた電気を販売する企業も出始めた。
さあ、FITでんきを買いにいこう。
2011年以降、ソフトバンクが普及拡大を進めてきた自然エネルギーをようやくお客様に届けることができる」。
そう語るのはソフトバンク100%子会社で電力小売りを担当するSBパワーの馬場一社長だ。SBパワーが提供するのは「FITでんきプラン」。ソフトバンクグループが所有する太陽光発電所など、再エネ電源からつくられたFIT電気を一般家庭に届けるというもの。
16年度のFIT電気比率は57%、最低でも50%以上にすることを約束済みだ。
今のところ供給エリアは北海道と東京電力管内だけだが、「エリア外に住む人たちから、自分たちのエリアでもやって欲しいという声を頂戴している」と、反響は上々のようだ。「準備が整い次第、順次エリアを拡大していく」と馬場氏は語る。
ようやく日本にも、再生可能エネルギーを中心とした電力供給を目指す新電力が登場しつつある。その1社が、コープさっぽろグループのトドック電力だ。トドック電力は王子製紙が所有する水力やバイオマスといった安定した再エネ発電所の電気を多く調達し、FIT電力で60%構成された電気を一般家庭に提供するという。
太陽光発電のベンチャー、Looopは、FIT電気20%に、FIT制度外の、いわば純粋な再エネ電源6%をブレンドした電源構成で、電力供給を行う。
またワタミ子会社のワタミファーム&エナジーは、9月までにFIT電気の比率を現在の3%から33%まで増やす予定だ。
太陽が昇っているお昼(8時から16時)の間、100%のFIT電気をお届けします。そんな取り組みを始めるのが、NTT西日本グループのNTTスマイルエナジーだ。太陽光発電向け遠隔監視システムを展開してきただけに、限られた時間帯とはいえ、100%の再エネ電力を自社ユーザーに提供していく。
どの発電所でつくられた電気なのか。一般消費者でも自由に選択できる仕組み「顔のみえる電力」を導入したのが、東京世田谷生まれのみんな電力だ。同社は多くの再エネ発電所と提携しており、選択次第ではより再エネ比率を高めることができるという。
FIT電気は高くない
再エネ比率が高いのはいいけど、発電コストが高い再エネ電源だ。電気代が高くなるのでは。そう思う人は多いだろう。実際のところ、彼らの料金プランはどうなっているのだろうか。
SBパワーの「FITでんきプラン」は、北海道エリアであれば基本料金はこれまで通りで、従量料金は0.2~1%安く設定されている。しかし、東電エリアは、基本料金の据え置きは同じだが、従量料金で安くなるのは第2段階のみ、他は今より上がってしまう。
少し割高な電気になるが、そこはソフトバンク、おうち割でんきセットで月額200円の割引と、さらにTポイントが1000円につき5ポイントたまる、ポイント制度を組み合わせる。東電管内で30A、333kWh/月の使用量で年間約2840円、北電管内で同条件なら年間約4100円おトクになると、ソフトバンクは試算する。
一方、北電エリアで電気を供給するトドック電力の料金プランは、従量料金を0.5~1%安くしたもの。
Looopやワタミも今の電気代より安くなる料金設定をしており、NTTスマイルエナジーも、これまでの料金とほぼ同等になるという。
FIT電気を購入するからといって、電気代が高くなることはなさそうだ。
いっそ、自分の家で発電するという方法も
FIT電気もいいけれど、純粋な再エネを使いたい。そんな人のために、通信工事大手コムシスグループの日本エコシステムが提供するのが、太陽光発電を初期費用0円で導入できる『じぶん電力』だ。じぶん電力の仕組みは次の通り。
①太陽光パネルを初期費用0円で自宅の屋根に導入する②発電した電気は直接、家の中で使う③発電していない時間帯は日エコが電気を供給してくれる、というもの。
太陽光パネルの所有権を20年間、日エコが持つことで、念願の太陽光発電を初期費用0円で導入できるというわけだ。
そのため、太陽光発電でつくった電気も、電気代を支払う必要があるものの、これならFIT制度に頼らず、純粋な再エネを多く使うことができる。電気料金は上表の通りで、「電気使用量が月間350kWh以上であれば今より安くなる」(日本エコシステム企画開発部長の石原敦夫取締役)という。たとえば日照条件が比較的良い、四国電力管内で50A、450kWh/月使う家庭が、34%を太陽光発電でつくった電気を使用すると、1年間で1万648円おトクになると試算する。
0円で太陽光を導入でき、しかも電気代がおトクになるのであれば、「太陽光に興味はあるものの、費用負担が重荷で購入に至っていないお客様も気軽に導入できる」と話す。しかも、導入した太陽光発電は、「20年後に無償で提供」されるのも魅力だろう。
ただし、契約期間が20年の長期にわたる点には注意したい。途中解約もできるが、その場合は契約経過年数に応じた金額で太陽光パネルを買い取ることが条件となる。また太陽光発電を導入済みの住宅や築20年以上経過した住宅は対象外となり、電気料金の支払いはクレジット決済のみといった条件もある。すべての人が対象ではないので、事前確認をきちんとしてから、契約しよう。
電力自由化は国民投票にもなる
電気はさまざまな電源が混ざり合い、一般家庭へと届けられるもの。色も匂いもないその電気に、再エネ印をつける方法は、技術的には不可能だ。けれど、再エネ発電所からつくられた電気は、そのまま一般家庭に送られていると擬似的に想定することで、電源を選ぶことができるわけだ。
ソフトバンクグループで自然エネルギーの普及を担うSBエナジーの藤井宏明副社長は、「FIT電源を約60%使用する電気が国民から支持、選択されれば、国の政策にも大きな影響を与えることができるだろう」と語ったが、電力自由化は、一種の国民投票でもある。一人一人の選択が、日本の電源構成の将来像を決めていくことにつながるからだ。
電力自由化はまだ始まったばかり。電気代が少しでもおトクになる、そんな再エネ電源が登場しつつある。さあ、あなたはどの電源を選びにいきますか。