1月14日、アブダビで開催された国際再生可能エネルギー機関(IRENA)第8回総会に出席した河野太郎外務大臣。「日本の再生可能エネルギー外交 –気候変動とエネルギーの未来」と題した政策スピーチの中で、「日本の再生可能エネルギーを巡る現状は、嘆かわしい」と語った。
約150か国の政府、民間企業、市民社会から約1,100名が参加したIRENA第8回総会。
日本の外務大臣として、初めてIRENA総会に出席した河野大臣は、14日に実施された閣僚級ラウンドテーブル「エネルギー転換のための革新:E-モビリティ」の冒頭、「日本の再生可能エネルギー外交 –気候変動とエネルギーの未来」と題する政策スピーチを行った。
世界は、「再生可能エネルギーの時代を迎えており」、再エネの拡大を通じて、気候変動を抑え、未電化地域に光を届ける時代に入ったと冒頭、語った河野大臣。だが、「再生可能エネルギーの導入で世界から大きく遅れた日本の現状は嘆かわしい」とも述べた。そのスピーチ概要は以下の通り。
再生可能エネルギーの時代の到来
再生可能エネルギーの劇的な価格下落や、気候変動問題が脱炭素化を不可避にしている世界の趨勢から目を背け、変化を恐れて現状維持を優先した結果、日本の再生可能エネルギーの電源割合目標は、2030年で22〜24%という大変低い数字にとどまっています。
現在、再生可能エネルギーの電源割合の世界平均は24%であり、日本が2030年に目指す数値が、今の世界平均ということは、日本の外務大臣として、何とも悲しく思います。
これまでの日本の失敗は、世界の動きを正しく理解せず、短期的なその場しのぎの対応を続けてきた結果です。日本も、2012年以降、固定価格買取り制度を導入し、再生可能エネルギーの導入を加速しようとしてまいりました。
しかし、制度の硬直的な運用により、国民負担は2017年度には約240億米ドルにのぼり、今後さらに増える見込みです。
また、世界的な太陽光や風力の劇的な価格低下を日本は享受できていません。分散型電源や再生可能エネルギーの熱利用も十分に活用されているとは言えません。
日本では昨年秋に初めての入札が、一部太陽光で実施されたばかりですが、入札制度も含め、いかに再生可能エネルギーの価格を下げるか知恵を絞る必要があると痛感しています。
さらに、再生可能エネルギーの大量導入を可能とするための送電網・連系線の増強や地域を越えた電力融通も大胆な投資や制度改革はなされていない状況です。
かように現在の日本の現状は嘆かわしいものですが、しかし、私は今日、このIRENA総会の場で、今後、日本は新しい思考で再生可能エネルギー外交を展開し、世界の動きを正しく理解し、長期的視野に立った一貫した対応をとっていくことを宣言したいと思います。
技術とイノベーションの力で世界に貢献
「日本は先進的な技術力とイノベーションの力を活用することで、世界をリードする」——。
日本のビジョンをこう語った河野外務大臣は、太陽光発電を中心としたイノベーションに触れる。
太陽光はパネル価格の下落によって、世界で大規模な展開が実現されましたが、日本は技術とイノベーションの力で、太陽光発電をさらなる新しい次元に導いていきたいと考えています。
例えば、太陽電池で世界市場の90%以上を占める「結晶シリコン系太陽電池」では、世界平均が14〜16%であるのに対し、日本企業がセル単位での変換効率26.6%、モジュール単位では24.4%と、世界最高性能を達成しています。
人工衛星や宇宙ステーションで使われる「化合物半導体系太陽電池」でも、日本企業が世界最高の効率を実証しています。また、圧倒的な低コスト化が期待できる「塗る」新型太陽電池の研究開発も進められています。
また輸送部門を脱炭素化するためのE-モビリティのアプローチにおいては、蓄電池技術の革新が極めて重要です。この分野では、走行距離を大幅に延ばし、安全性も格段に向上させる「全固体電池」を日本の大学が開発し、メーカーとともに実用化を開始しています。
「近年、再生可能エネルギーの重要性は増大しており、それとともにIRENAの果たすべき役割もより重要になっている」と語り、IRENAを支援していくと表明した河野外務大臣。
「嘆かわしい」日本の再生可能エネルギーを巡っては、経済産業省の有識者会議「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」などで議論の真っ最中でもある。
果たして、日本は世界に並ぶ導入改革を実現できるのか。否が応でも、注目は集まる。