2040年ごろにも、80万tの太陽光パネルが大量廃棄される——。
将来の大量廃棄を巡って、「放置・不法投棄されるのではないか」「有害物質が流出・拡散するのではないか」といった懸念が拡大する。経済産業省・資源エネルギー庁では、廃棄費用の積み立てを確実にするべく、FIT制度の執行強化に動き出した。
1月24日に開催された「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」の検討議題は、太陽光パネルの大量廃棄にもおよんだ。
25〜30年とされるパネルの製品寿命が尽きる2040年ごろ、80万tが廃棄されるかもしれない。太陽光発電所の大量導入と相まって、将来の大量廃棄を巡る懸念が今、拡大している。
実際、「廃棄処理費用が適切に積み立てられず、放置・不法投棄されるのではないか」。「不適切な廃棄処理によって、有害物質が流出・拡散されるのではないか」。あるいは、「大量の最終処分により、最終処分場がひっ迫しないか。資源として有効利用できないか」と懸念は多岐にわたる。
とりわけ、早期対応を迫られるのが、廃棄処理費用の不足による「放置・不法投棄」リスクだ。
屋根上PVであれば、建物の撤去に伴い廃棄されることが一般的で、空き家や廃墟にならない限り、放置リスクは少ない。また借地で実施する太陽光発電所も、地権者に対し現状復帰義務を負うため、放置リスクは低い。
ところが、自己所有地での太陽光発電所は、「有価物だ」と称し突っぱねられてしまうと、お金がかかる廃棄処理を拒み、撤去もせずに、放置される危険性がある。
しかも、そもそも廃棄費用がなければ、不法投棄されかねない。FIT法では、廃棄等費用として、調達価格に資本費の5%が計上され、廃棄等費用の積み立てを要求している。しかし、あくまで努力義務であるため、積み立てを実施する事業者は限定的だ。
実際、低圧事業者896のうち、積み立て未実施は74%、高圧でも168のうち、59%が未実施という調査結果すらある。
また、太陽光パネルには鉛やセレン、カドミニウムなどの有害物資が使用されている。こうした有害物質の含有情報が、廃棄物処理事業者などと共有されなければ、さまざまな懸念を生む。すでに、「管理型最終処分場」への埋め立て処理をしなければならないにもかかわらず、遮水設備のない「安定型最終処分場」への埋め立てが実施される。そんなリスクが浮上している。
「太陽光パネルリサイクル法」の必要性も検討
大量廃棄を巡るリスクを解消するため、大量導入小委員会では、「第3者が外部で廃棄費用の積み立てを行う仕組み」を検討することで合意。とはいえ、検討には相応の時間がかかるため、まずはFIT制度の執行強化に動く。
FIT法上、発電事業者は毎年の報告義務(年報)を負うが、この年報に廃棄等費用の積み立て計画・進捗状況の項目を追加。報告の義務化がまず一つ。
さらに公表制度にも、廃棄等費用の積み立て計画・進捗状況の項目を追加。どの事業者が廃棄費用を積み立てているのか。その額はいくらなのか。情報公開にも踏み込み、経産省のHP上で情報確認できるようにする。
その一方で、積み立て計画が滞った事業者には、報告徴収・指導・改善命令を出すことで、大量廃棄時代に対応する構えだ。
また、太陽光パネルのリユース・リサイクルも促進していく。現状、太陽光パネルの廃棄はごく限られた量しかない。そのためリユース・リサイクル・処分量がどれだけ発生しているか、その情報すらないのが実情だ。
リユース・リサイクル促進に向け、まずはリサイクル処理コスト含めた実態調査を環境省・経産省2省で実施。さらに、「太陽光パネルリサイクル法」といった義務的なリサイクル制度も検討していくことで、小委員会は合意する。
パネルの大量廃棄は、導入量ベースで4割程度にものぼる50kW未満(低圧)の対応が鍵を握る。すでに低圧PVは、「総販売電力量の2〜3%を供給している」という声もあるほど。大量に導入される低圧PVが、いっせいに廃棄されれば、放置・不法投棄リスクに加え、発電量の激減まで引き起こすことになる。そうなれば、エネルギーミックスも持続しない。
廃棄費用の積み立てやリサイクル法の制度化とともに、20年後も持続的な再投資が進む。太陽光発電を増やし、守る枠組みづくりも、検討しなければいけないだろう。