広大な土地に豊かな自然が息づく北海道。
雪まつり、牧場、温泉、グルメ、歓楽街…などなど、
魅力を挙げればきりがない。
そんな日本北端の地では、電力事情もちょっと特殊。
夏は涼しく、冬は極寒な北海道ならではのサービスを探しにいこう。
データで見る! 北海道のエネルギー事情
まずは、北海道の基本的なデータから紹介しよう。表1は、面積のランキングだ。北海道が最も大きいことは周知の事実だが、改めて数値で見るとその圧倒的ぶりがわかる。逆に、人口密度(表2)は47都道府県で最も少ない。3割以上の人口が札幌市に集中しており、都市部から離れるほど、さらに密度は少なくなる。民家1軒1軒の距離も離れていることが想像できる。
また、北端に位置する北海道は、夏は涼しく冬は極寒の寒冷地だ。それを如実に表しているのが、表3のルームエアコン普及率と、表5の灯油購量である。夏場のクーラー需要が少ない北海道では、7割以上の家庭がエアコンを所有していない。その代わり、暖房だけでなく、お風呂などの給湯にも使用する灯油は、道民にとって欠かせないエネルギー源なのだ。実際、北海道のエネルギー供給の構成比(表6)を見ると、灯油の原料である石油に大きく依存していることが分かる。
灯油を多く使用するということは、光熱費が他の都府県よりも余計にかかることになる。ただし、北海道の平均所得(表4)は決して高水準にあるとは言えない。北海道に住む人たちにとって、光熱費の削減は大きなテーマなのだ。
どさんこ新電力徹底解説!
北海道のエネルギー事情を学んだところで、
おトクな電気を提供するどさんこ新電力4社を紹介しよう。
料金メニュ―だけでは見えない魅力がありました。
躍進する北ガスの電気
どさんこ新電力の筆頭は、都市ガス大手の北海道ガス(以下、北ガス)だ。申込み件数は2万件を突破し、今道内で最も選ばれている新電力である。
「北ガスの電気」は、10Aから契約金・違約金なしで加入できる間口の広い料金メニューだが、北ガスユーザーならさらにおトク感が増す。北ガスグループまたは提携する道内ガス会社のユーザーであれば、少ない使用量の家庭でも従量料金が北電より3%割引になる。さらに、給湯や暖房など北ガスのガス機器を使用しているという家庭は、さらに1~3%の上乗せ割引がついてくる。
給湯や暖房の使用で割引が適用されるのは、寒冷地ならでは。しかし、北海道では給湯や暖房にガスではなく灯油を使用する家庭が多数派で、都市ガスの需要が全国平均より少ない。ただ、北ガスのエネルギー企画部営業企画グループ北本満マネージャーは、「北海道の住宅は高断熱・高気密化しており、室温を常に一定に保つ家庭が増えている」と話す。高断熱・高気密住宅だと、暖房に都市ガスを使うことも可能だというわけだ。これから住宅を新築しようという家庭は、住まいと一緒に、北ガスの電気を検討するのもありだろう。
さらに、「電気だけでなく、暖房、給湯まで自動管理する家庭のエネルギー管理システム(HEMS)を2018年にリリースする予定です。省エネのサポートや快適さを追求したサービスにより、お客様に選んでもらいたい」(北本氏)と話す。
北海道の冬はやっぱり灯油!?
北ガスが躍進を続ける一方で、やはり北海道では“灯油”への関心が大きい。「北海道の光熱費はイコール灯油と言っても過言ではない」と話すのは、いちたかガスワン営業本部開発担当の石川浩氏だ。同社は、関東のLPガス会社であるサイサンの子会社だが、創業から60年以上、札幌や帯広、函館エリアに根付いた地元企業でもある。
そんな北海道の特性を熟知した彼らが用意したのは、ガスだけでなく、灯油も組み合わせたセット割メニュー。20A以上の家庭であれば、基本料金と従量料金のどちらも北電より安くなり、同社のガス、灯油、ガス暖房(エコジョーズ)を利用していれば、さらに電気代がおトクになる。
現在約5千件の申込みを獲得しており、事業規模を考えると北ガスに勝るとも劣らない勢いだ。石川氏は「北海道の家庭には、500リットルのタンクが置いてあり、冬の期間はそこに毎月灯油を配送する。灯油を通じたお客様との結びつきは非常に強く、電気をご提案した際の感触もいい」と灯油割メニューの反響の大きさを語る。
『北海道の冬は、やっぱり灯油でしょ!』という家庭にとっては、うれしいメニューとなる。
地方でもおトクな電気を買える!
道内に150万人以上の組合員と、108の店舗を持ち、34万世帯へ食品などの宅配サービスを展開するコープさっぽろ。彼らもおトクな灯油と電気をセットにした電力メニューを一般家庭に提供する。組合員に電気を届けるのは、グループ会社の「トドック電力」。
コープさっぽろを通じて申し込める料金プランは2種類。まずは「ベーシック電気メニュー」、火力発電所で発電した電気をメインにした価格重視のプランとなり、従量料金が使用量に応じて北電より1~8%安くなる。
一方、「FIT電気メニュー」は、環境価値や電源構成で選びたいというニーズに応えたプランとなる。水力発電所やバイオマス発電所などの電源をメインとしながら、従量料金を0.5%~1%安く設定している。しかも、いずれのプランとも、灯油の定期配達を契約すれば、さらに従量料金の割引が2%上乗せされる。
トドック電力の木暮明大専務取締役は、「コープさっぽろだから安心というお声もある」と話す。北海道では指折りの事業規模をほこるコープさっぽろ。長年地域で築いた信頼は大きい。また、組合員であれば、道内のほぼ全域でおトクな電気を買える点も、人口密度の少ない北海道では見逃せない。
人に地域に還る電力
電気と一緒にスポーツや食育、子育て支援をしたい――。
そんな電気を提供するのが、Jリーグチーム「北海道コンサドーレ札幌」と、道内では「サツドラ」としてお馴染みのサッポロドラッグストアーが設立母体となったエゾデンだ。
全国的にも異色の新電力が目指すのは電力販売を通じた地域貢献だ。エゾデンの渡部真也取締役は、「誰もが使う電気を通じて、サッカーファン以外にもコンサドーレの地域貢献活動を知ってもらいたい。電気の販売で得た収益を、コンサドーレやサツドラが取り組んでいるスポーツ教室の開催や食育、子育て支援の推進などに充てたい」と話す。
肝心の料金プランは1種類とシンプル。30A以上の家庭なら誰でも加入でき、120kWh以上の従量料金が北電より6~9%安くなる。さらにサツドラをはじめ道内550店舗で使用できる「EZOCA」のポイントも付与される。単純に電気だけを安くしたい人やEZOCAユーザーも注目だ。コンサドーレの試合会場やサツドラ店頭でPRを行っているが、申込みはWEBのみとなる。
北海道でしか味わえない電力選びを
どさんこ新電力は個性派ぞろい。背景には値上がりした電気代や毎冬の寒さという厳しい事情はあるが、北海道でしか味わえない電力選びの面白さもある。道民なら一度は家庭の電力を見直す価値はありそうだ。