長野県北部に位置する飯山市。積雪4mを超えることもある日本でも有数の豪雪地帯だ。過去には大雪で停電が発生したこともあるだけに、有事の際の電力確保を想定し、デルタ電子は2020年6月、市内の戸建住宅に太陽光発電設備と蓄電設備を設置する取り組みを始めた。
豪雪地帯における課題は太陽光パネルの設置だ。一般のパネルは積雪2mの重量までしか対応しておらず、屋根上に載せるのは難しい。そこでデルタ電子は、雪止め金具や太陽光架台・金具を製造するスワロー工業と壁面にパネルを取り付ける工法を開発した。
具体的には、住宅の壁面に水平の柱を追加設置し、その上にスワロー工業の架台、『SKフレーム』を設置した。デルタ電子エナジーインフラ営業本部の高嶋健マネージャーは、「コストを抑えるため、汎用架台をそのまま使うことを目指した」と振り返る。粉体塗装などを施したが、特別な改良を加えず使用したという。発電量を高めるため、太陽光パネルを垂直ではなく垂直方向から20度傾けて取り付けた。
5.44kW分のハンファQセルズ製太陽光パネルと、蓄電容量5.6kWh、PCS(パワーコンディショナ)出力5.9kWのデルタ電子製ハイブリッド型蓄電設備を採用。余剰電力は売電するが、極力太陽光電力を自家消費する設計を施し、地元の工務店や電気工事会社に施工を依頼した。
冬の方が発電
デルタ電子は、スキージャーナリストの尾日向梨沙氏にモニター設置の協力を依頼した。尾日向氏は、2020年春に神奈川県から移住したばかりで、「自給自足に近い暮らしを求めて飯山に移り住んだ。電力を自給自足できる太陽光発電にも昔から関心があった」と振り返る。
そんな尾日向氏。2020年10月に設備が稼働し、太陽光電力を活用する生活を始めたが、いくつか気づきがあったという。「太陽光パネルに雪が積もっていても、太陽が照るとパネル表面が熱を持ち雪が落ちやすくなる。また、雪で光が反射するためか、冬の方が発電量は多い」(尾日向氏)。雪国でも太陽光発電への関心は高いようで、設備設置後にスキー関係者の訪問が増えたようだ。
尾日向氏は今後、太陽光発電による電気自動車の利用など、再生可能エネルギーの自給自足率を高めていきたいようで、「今回の取り組みが再エネ普及のきっかけになれば嬉しい」と話した。