ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク
新千歳空港から南へ1kmほどの距離に安平町はある。ここまで車を走らせてきたが、周囲に商業施設はほとんど見当たらない。かわりに農地や牧場が広がる、のどかな印象の町だ。
「チーズが特産品で、あの高倉健さんが毎月取り寄せていたお店があるんです」と話すのは、SBエナジーで地域貢献事業を担当する田中園子氏。実は安平町、現・雪印乳業が日本初のチーズ工場を建設した地でもある。
この安平町の広大な土地を活用して生まれたのが、今回訪れたソフトバンク苫東安平ソーラーパークである。2016年3月末時点では、日本で2番目の大規模太陽光発電所だ。166万㎡もの土地に、44万4024枚の太陽光パネルが並ぶ。
写真を見ただけでも伝わるほどの迫力だが、それでも間近で見て気づいたことがある。1枚1枚の太陽光パネルが想像以上に高く設置されていることだ。
発電所の建設に携わったSBエナジーの齋藤桂一郎氏は、「北海道は雪が積もるので、太陽光パネルを乗せる土台を高くしています。一番高いところで2.5m。それでも安平町は、降雪が比較的少ない地域なので、低い方なんですよ」と理由を教えてくれた。また、通常の太陽光パネルの傾きは10度ほどだが、30度にしている。これも雪がパネルに積もらないようにする工夫だという。
発電所は15年12月に完成し、現在約3万世帯分の電気がつくられている。しかし、この発電所が果たす役割は単なる発電だけではないようだ。SBエナジーでは、発電所の建設計画が縁となり、年1回町内の小学校4校で、それぞれ特別授業を実施している。
「1日2コマ、2日間の時間をいただき、生徒さんが主体的にエネルギーを考えるきっかけになるような授業を企画しています」(田中氏)。主な内容は生徒たちが、身近なものから未来のエネルギーを探すというもの。例えば、花の育つ力や歩く衝撃がエネルギーに変わるのでは、といったような、児童ならではの柔軟なアイデアを出し合い、グループでまとめて発表する。授業ではiPadを支給することで、生徒の興味を引き付け、五感を使って立体的に学べるようにする。さらに、発表した内容はクラウド上で共有し、生徒が互いに『いいね!』ボタンを押して称え合うこともできるという。
田中氏は、「日ごろ静かな子が積極的に発言するなど、先生方からも普段見られない顔が見えるという言葉をいただいた。特別授業は今年も実施が決まっており、これからも毎年続けていければ」と話す。太陽光発電所をきっかけに、安平町から未来のエネルギーが生まれるかもしれない。