電力会社を乗り換えると停電が増えるー。
巷ではそんな根拠のない都市伝説がはびこっているという。
さらに、自由化に便乗した悪徳商法まで出ているというから注意が必要だ。
安心して電力会社の乗り換えができるよう、押さえておきたい9つの都市伝説を解明する。
信じるか信じないかはあなた次第!?
都市伝説①:電力会社を乗り換えると、停電が起こりやすくなる?
解:なりません
電力の供給システムは①電気を作る発電部門②電気を送る送配電部門③電気を販売する小売部門の3つに分類されており、今回自由化されたのは小売部門です。電気を一般家庭に届ける送配電部門はこれまで通り、北は北海道電力、南は沖縄電力まで、全国10社の送配電部門が担当します。
仮に新規参入の小売り電気事業者(以下、新電力)が十分な電力を仕入れることができない場合であっても、系統全体で一般送配電事業者(以下一般送配電)が需給バランスを維持する、つまり一般送配電がその不足分の補給を行うため、消費者に対する供給が停止されることはありません。
加えて、「電力会社を乗り換えるためには新たに電線が必要」といった根も葉もない噂があるようですが、これもまったくの嘘です。これまでと同じ送配電網を使って電気が供給されるため、新たに電線を引く必要は決してありませんのでご注意を。
都市伝説②:スマートメーターの設置には費用がかかる?
解:原則、一切かかりません
スマートメーターのほか、鉄塔、送電線、電柱、変圧器など、電気の供給に必要な設備の建設・保守は、一般送配電が行います。
これらの費用は、託送供給料金(※)として電気料金に加算されていますので、スマートメーター設置に伴う費用を一般家庭から個別に徴収することはありません。
また、「スマートメーターがないと電力会社の乗り換えができない?」という疑問をお持ちの方がいるようですが、スマートメーターの設置が遅れても、従来型のメーターのままで乗り換えは可能です。ただし、時間帯別料金プランや節電サービスなど、スマートメーターを利用したプランの場合、スマートメーターの設置まで、利用可能なサービスが限定されますので要注意です。
都市伝説③:電力会社によって電気の品質が変わる?
解:品質は変わりません
ある発電所で作られた電気は、送配電の中で他の発電所で作られた電気と混ざります。
左図のように、複数の蛇口(=発電所)からプール(=送電線)に注がれた水(=電気)が、プールの中で混ざり合うようなイメージです。各家庭に届けられる電気はプールで混ざり合った水が水道から出てくるようなもので、どの発電所で作られた電気か区別されずに届けられることになります。
ただし、これからは「再生可能エネルギーで発電した電気を購入したい」など、電源を選ぶことが可能になります。
というのも、新電力は自社で発電する、あるいは様々な発電所から電気を購入して電気を集め、需要家にその電気を売っている、いわば仲介役です。先述の通り、各地の発電所で発電した電気は送電線の中で混ざり合いますが、下図のように、新電力が自ら発電、または買った電気はそのまま一般家庭に供給されていると、擬似的に考えられるのです。
つまり、再エネ発電所を多く持っている、あるいは多く集めている新電力を選択するということは、それだけ再エネ発電所で作られた電気を使用しているとみなされることになります。
最近では、こうした電源特性をセールスポイントにしたメニューも多くなっています。
都市伝説④:自由化になると今より電気代が安くなる?
解:そうとは限りません
自由化によって、新電力は自由な料金メニューの設定が可能となります。料金プランによっては今の電気料金よりも高くなる可能性もありますので、料金シミュレーションなどをして、電力会社の乗り換えを行うことをおススメします。
また、新電力の競争力が高まれば、電気料金の低下が想定されますが、競争が不十分な中で自由化を実施すると、電気料金の引き上げが生じてしまうおそれもあります。
電気料金を安くする。なにより消費者保護のため、競争が十分に進展する2020年頃まで、経過措置として現行の規制料金も存続させることとしています。
都市伝説⑤:とんでもなく高額な解約金を請求されるってホント?
解:嘘です
不当に高額な違約金はガイドラインで禁止されています
新電力は、契約時に消費者に対して電気料金や解約条件などについて書面を渡して説明することが義務付けられているので、契約時にきちんと確認しましょう。
なお、不当に高額な解約金の設定などは、経済産業大臣による是正命令の対象となっているので、とんでもなく高額な解約金を提示された場合は、経産省の専用ナビダイヤルや、消費生活センターなどへ相談してみましょう。