CASE 04
Looop
おうちプラン
ベンチャー企業に期待
長谷川さんはWebアプリ開発などを手掛ける会社に勤め、電力関係のシステム開発にも携わっている。また、「新しいことや、お祭りごとが好き」という性格もあって、電力自由化の開始に伴い、いち早く電力選びを検討した。
さっそく長谷川さんは比較サイトを使ってシミュレーションするなど、情報を集めた。長谷川さんの家は奥さんと子供3人の5人家族で、神奈川県に一戸建てを構える。電気使用量は150〜550kWhと季節によって変動幅はあるが、平均は350kWhほど。
長谷川さんは、価格やエコであること、そしてベンチャー企業であるといった軸で電力選びを進めた。
「自分がベンチャー企業に勤めているということもあり、新しい市場が始まった時になにか面白いことをしてくれるのではないかと期待を込めて」と長谷川さんは話す。
価格に関しても、Looopでんきの基本料金0円のインパクトが大きかったという。「従量料金26円一律といったプランをLooopさんが発表した後、他の会社も追随するかと思ったが出てこなかった。それはLooopさんのプランがビジネス的にもギリギリのところでやっているからではないかと思い、また実際安くなるので申し込んだ」。
4月28日からLooopでんきに切り替わり、初月は171kWhの電気使用量で4269円だった。東京電力と契約していた時(契約電流40A)は170kWh、4692円だったので、乗り換えたことで400円ほどおトクに。
「今は比較サイトなどで簡単にシミュレーションできるし、気に入ったものがあればすぐに申し込みできる。これからはマイページに電気の情報がたまっていくので、管理しやすく、便利にもなります。若い人はどんどん乗り換えて、業界を変えていってほしいですね」と長谷川さんは語る。
CASE 05
みんな電力
スタンダードプラン
再エネ電源を選びたい
震災の影響もあり、再エネへの関心が高かった姫川さん。「少し電気代が高くなってもいいから、再エネ比率の高い電源を選びたい」と電力選びを始めた。
ただ、「単純に再エネ比率が高いというだけではなく、再エネ発電所を増やす取り組みを行っている企業を応援したい」と姫川さんは考える。そこで目を付けたのがみんな電力だった。
みんな電力では、需要家が電気を購入したい発電所を選ぶことができる。選んだ発電所から電気が送られる代わりに、電気代の一部が上乗せされて発電事業者に支払われる。「再エネの電気を使うことができるうえ、再エネ発電所の応援ができる」とあって、姫川さんは乗り換えを決めた。
姫川さんは旦那さんと息子さんの3人家族。都内に一軒家を構え、月の電気代は1万円〜1万5000円ほど。みんな電力に乗り換えると、電気代は下がる計算だが、仮に上がったとしても「その分、電気の使用を減らせばいいじゃん」と姫川さん。「ご飯だってお鍋で炊いた方が美味しいし、電気も使わないで済む」と、電気使用量を減らす方法はたくさんあると姫川さんは話す。
電力の乗り換えに躊躇する人も多いが、「実際に切り替えた人の感想を聞くことで、迷っている人も行動に移せるようになるかもしれない。価格重視でも再エネ重視でも、エネルギーを考える人が増えるきっかけになれば」と、姫川さんは積極的に実体験を話していきたいという。
CASE 06
丸紅新電力
プランG・60A、30A
僕らはおトク度以外の価値で、電力選びを実践中
年代も、家族構成も違うお二人が、偶然、選んだ料金メニューが丸紅新電力のプランGだった。
プランGといえば、丸紅グループとスタジオジブリが組み、映画「となりのトトロ」の舞台となった狭山丘陵の自然を守るため、電気料金の一部を保全活動に使うというもの。
橋本浩一さんにとって狭山丘陵は、「実家があって、子供たちとよく遊びに行き、どんぐり拾いをした思い出の場所」。毎月の電気代が8000円から1万円を超える時もある橋本家。どの料金メニューを選ぼうかと調べたところ、プランGが狭山丘陵を支援すると知る。
「プランGは、今までの電気料金(東京電力・従量電灯B)とほぼ同じ料金帯です。多少、高くなったとしても、数百円程度なので負担感は少ない。どうせ選ぶんだったら、子供たちと過ごした思い出を将来まで残せるプランに」という思いで加入を決めた。
「子供たちに、どんぐりを拾いに行った狭山丘陵を守るプランに入ったんだよ、と教えたら、懐かしそうな顔をしていた」という橋本さん。おトク度以上の価値を実感中だ。
スマホは格安、電気はお値段以上
秘訣はメリハリつけた節約
一方、2か月ほど前にパパになったばかりの赤井さん。げっ歯類のチンチラと一緒に暮らす赤井家は、「季節によっては1日中エアコンを使うことも」。これまでの電気代は1万円程度だったが、家族が増えたことで、電気代が上がるかもしれないなと、「料金比較サイトを使って、料金試算を始める」。
格安スマホを使いこなしてきた赤井さんが、検討する上で設定した条件が、「電気料金1本でどこが最安なのか」。ところが、「安くなるといっても、毎月、数百円ほど。数十円というメニューもあり、電気料金がほとんど変わらなかった」。
どこと契約しようか悩んだ際、「生まれたばかりの子供のためにも、自然豊かな日本が残せるような、社会的に意義のある電気を買いたい」と考えるようになり、プランGを選ぶことに。
「せっかくスマホキャリアも電気を売っているんですから、自由化を機に、電気料金も携帯代も見直されたら」と赤井さん。「格安スマホに夫婦揃って乗り換えたら、毎月1万5000円ほどおトクになった」という新米パパは、電気は特徴あるメニューを、スマホは最安にと、メリハリ効かせた選び方を実践している。
CASE 07
水戸電力
ベーシックプラン・30A
出会いのきっかけはツイッター
川澄さんは、大手電機メーカーを退職後、年金生活を続ける傍ら脱原発活動に取り組んでいる。ツイッターを使いこなし、原発関連の話題を中心につぶやくことが日課だ。
去年の暮れ、自身をフォローした水戸電力というアカウントが気になった。水戸市は自身の住む茨城町の北隣。「地元にこんな電力会社ができたのか」と初めて存在を知った。
もちろん、電力自由化への関心は高かった。原発事故の対応などから、「東電にはお金を払いたくない」との思いがあり、「電気代が高くならないのであれば、再生可能エネルギーを重視した会社」を選びたいと考えていた。
電源構成わからず不満もパワーシフトで情報集め
今年に入ってから電力選びを開始。普段からインターネットで情報収集をするため、比較サイトの存在は知っていたが、シミュレーションはしなかった。なぜなら、乗り換えの軸となる再エネ比率はわからないからだ。
「(国の方針で)電源構成の開示が義務化されなかったことが不満だった」。そこで重宝したのが、環境系のNGO団体などが運営するパワーシフトだ。パワーシフトとは、再生可能エネルギーを重視する電力会社を、独自の基準でピックアップして紹介するサイト。「電力会社に取材し、電源の情報を補完してくれる」ため、参考になった。
サイト上には、あの水戸電力の名前も。推薦があり、再エネの比率が高かったため、乗り換えへの気持ちはより前向きになった。
もう一つ背中を押したのが故郷の存在だ。茨城県に住んで間もなく50年。水戸電力が愛着ある地元の電力会社という点にも惹かれた。「地域貢献を謳っているので、応援したいと思った」ことから申込みを決めた。
もっとPRを
電力会社の奮起に期待
水戸電力は自宅から車で30分と近い。検針票と印鑑を手に直接申込みに行った。「手続きは申込み用紙を出しただけで終わり」で、10分ほどだった。
4月10日に申込みをしてから、20日には水戸電力の電気になった。変わった実感はないが、「電気に色はついていないし、届く電気が再エネか、石炭火力かはわからない」ことは織り込み済み。それでも、「間接的に再エネが増えていく一つの要素になれば」と願う。
6月には、脱原発活動のグループで、パワーシフトや水戸電力の担当者を招き、勉強会も開いた。自身も知識を身につけながら、情報収集の苦手な人に向けて、学びの機会を作っている。
川澄さんは、自身がツイッターで水戸電力を知ったように、電力会社がPR活動に力を入れていけば、自ずと同志が増えると考えている。「水戸電力さんにも積極的に宣伝してもらいたい」と、再エネのさらなる普及に、電力会社の奮起を期待する。