コラム

完全小水力図鑑

ダムを使わない、小規模な水力発電所が注目を浴びている。
川の流れをそのまま活用するので、環境への影響も少なく、管理もそれほど難しくない。
そして地域社会への貢献にもつながる。

全国小水力利用推進協議会の事務局長を務める中島大氏によるQ&Aで小水力のことを勉強しよう。

Q1. 小水力発電ってなんですか?

A1. ひと言でいえば、ダムを使わずに、川の流れをそのまま利用する水力発電ですね。もちろん、ダム無しでも大きな、それこそ数万kW規模の発電所もありますが、分かりやすくいうと、ダムの無い水力発電所が小水力といえるでしょう。

そしてもうひとつ、地域の中で完結するといった点も小水力の定義になるかもしれませんね。取水口から発電所までが同一地区であるということです。川から水を借りてきて、発電して、また川に返すというのが水力発電の基本です。その間に、当然水の量は減ります。つまり、環境への影響も出るということです。その影響を、自分たちの問題として見ることができる。地域内で、問題も含めて完結できるというのが小水力といえるでしょう。

Q2. 発電規模による小水力の定義はありますか?

A2. 実は正式な線引きや定義といったものはありません。ただ、世界的には出力が1万㎾以下の発電所を小水力、スモールハイドロと呼ぶ人が多いですね。その一方で、日本では1000kW以下を小水力とするケースが多い。というのも、新エネルギー法の中では出力1000kW以下の水力発電所が「新エネルギー」に認定されているからです。

この違いは、国によって土地面積などの条件が異なるところからきています。たとえば、日本最大級の黒部ダムが33万kWですが、この規模であっても中国では中水力くらいに捉えられるでしょう。

ちなみに中国には2200万kWの三峡ダムがありますが、それは日本のすべての水力発電を足したくらいの規模です。それくらい国によって規模の違いがあり、小水力に対する捉え方も違っています。

Q3. 小水力の利点は?

A3. 他の再エネに比べて、CO2の排出量が少ないといった点がひとつ挙げられます。発電機の製作や、発電所をつくる際の工事など、CO2の排出がまったくないとはいえませんが、出来上がってしまえば燃料の輸送コストなどもいりませんし、環境への影響が少ないですね。
設備利用率が50%以上と高いのも特徴です。太陽光発電と比べると、同じ出力の発電所であっても小水力は5~6倍ほど発電します。

しかし、なんといっても最大のメリットは地域社会への貢献でしょう。先述の通り地域内で完結するというのが小水力です。ですから、地域にある自然資源を経済価値に変える、つまり地域に産業を興し、地域でお金を回し、地域に就業の場を作るといった点が、最大のメリットであると個人的には思います。

Q4. 小水力の課題は?

A4. 制度面で、発電所の建設に対する壁が高いというのがひとつありますね。

前例が少なく、河川の手続きひとつとっても時間がかかっているというのが実情です。今は先駆者たちがひとつひとつのハードルを地道にクリアしている状況ですので、これを続けていくほかはないと思います。

Q5. 日本は水力発電に適していますか?

A5. はい。水資源が多いので、適していますね。特に向いている地域は、中部山岳地帯周辺でしょうか。北、中央、南アルプスから流れ出る川の流域は特に適しています。

水力発電のポテンシャルが高いのは岐阜県や長野県。小水力で特に有名なのは富山県でしょうか。
しかし、それ以外の地域であっても、日本の川であれば概ね発電できます。

Q6. うちの近所のうさぎ川でもできるのですか?

A6. 基本的に落差(※)があり、流量があれば場所は問いません。
一般河川から、農業用水路、上水道施設に下水処理施設、ビルの循環水や工業用水を使った発電所もあります。

※1.5m未満の低い落差でも発電できる「低落差型」といった新しい技術を使った小水力の研究開発も進められているようです。

Q7. 小水力を作るのにかかる費用は?

A7. 各地域で取り組みを行う場合、出力200kWくらいの発電所が多いですが、それで2億5000万円~3億円程度でしょうか。
ただ、水力は場所によって土木費が大きく変わってくるので、一概にはいえません。

Q8. 小水力の歴史は?

A8. 戦前は全国的に送配電網がカバーされておらず、地域の農村部などでは、自分たちで使う分の電気は自分たちでつくろうということで、小さな水力発電をつくったという歴史があります。

日本で最初に、地域住民が力を合わせて電気利用組合を設立し、水力発電所をつくったのが飯田市の竜丘というところです。それが大正3年の話ですので、100年以上も昔の話になります。

Q9. 水力発電所の管理ってどんなことをしますか?

A9. やはり水路の管理が重要ですね。発電機など、機械の管理は基本的にはコンピューターで自動制御していますので、なにかトラブルがあればメールなどで知らせてくれます。もちろん、年に数回といった定期点検は必要です。
しかし、水路は人間が1日1回か2回ほど、こまめにチェックしてあげる必要があります。

天気の急変や、季節的にも落ち葉が多い時期などはその片付けも必要となるなど、対策が必要です。もちろん立地条件にもよりますが。費用に関しては、風力と同じで動力源があるので、油を差したり、定期点検をするなど、太陽光に比べると少し高いかもしれませんが、燃料が必要となるバイオマスよりは安価となります。

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