玉県東松山市にあるモデルハウス『ひきいるハウス』は、木材を100%使用した住宅だ。エネルギーをなるべく使わないように高気密、高断熱でつくられている。住宅を設計した一級建築士の八巻秀房さんは、家を建てた4年後、2015年2月にオフグリッドシステムを導入した。「目指すのは、100年使える家づくり。なるべく機械に頼らない、エネルギーを使わない家づくりをした結果、エネルギーも自給自足することにしました」と八巻さんは話す。
普段は、住宅の2階をスタッフと2人、事務所として使っている。家電製品は洗濯機とエアコンがないだけで、パソコンやコピー機、冷蔵庫、電子レンジもあり、一般の家庭とほとんど変わらない。このお家には、太陽光発電システムと蓄電池を備えている。蓄電池の容量は14.4kWh。1日に使用する電力は3kWh程度なので、曇りの日が続いても3日は電気をまかなえる。
オフグリッドハウスの低コスト化に挑戦する八巻さんが、費用を抑えるために購入したのがリユース(再利用)蓄電池だ。気になる価格は37万円と、新品価格の10%以下。導入コストを大幅にカットした。だが、リユース蓄電池と聞くと、製品劣化など問題はないのか少し不安になるもの。そこで、『ひきいるハウス』の蓄電システムを設置し、NPOで蓄電池の再利用を促進する、鈴木一郎さんに聞いた。
「この蓄電池は元々、非常用として使っていたものです。非常用の蓄電池は、信頼性が重要なので、電池の劣化に関係なく、既定の期間で必ず交換しなければなりません。ですから、新品のように使うことができて、メンテナンスもいりません。現在検証中ですが、最低5年は使えると思いますよ」
この家は、非常用のバックアップとして送電網にはつないでいる。八巻さんはできるだけ自然エネルギーでの自給自足を心掛け、電気供給を「受ける」「受けない」を手動スイッチで切り替える。
月々の電気代は500円以内。オフグリッド化する前と比べると電気代は、2644円から235円になったという。この家での実証実験を続け、住む人の考え方に合った、オフグリッドハウスを提供したいという。八巻さんはこの家での生活をこう語る。「オフグリッドハウスはエネルギーを実感できるお家です。電力を買うだけだと消費の部分には関心が向かない。エネルギーを管理する不自由さはあるけれど、楽しみながら生活できています。これからは、一部の電力をオフグリッドにするなど、住む人のオーダーメイドなオフグリッドが提供できればいいなと思っています」
