電力全面自由化開始後、盛り上がりをみせる一般家庭向け電力サービス。
新料金プランにセット割、ポイントサービスまで。
でも、ちょっとまって!
ビジネス向けはどうなったの?と思った、そこの社長さん。
なにやら、おトクな料金プランがあるみたいですよ。
2000年から始まった電力自由化。大規模工場やオフィスビル、デパート・スーパーなどはすでに開放済みで、残すはコンビニや商店、事業所などだったが、4月以降は電力会社を選べるようになった。その数、実に718万件。電力を買う側にしても、売る側にしても、大きなビジネスチャンスとなりそうだ。削減した電気代で新たな設備投資や事業ができるかもしれない。
まずはビジネス部門の電気料金プランのおさらいからしてみよう。
一般的に、低圧(50kW以下)の事業所などが契約できるのは従量電灯と低圧電力の2つ。従量電灯とは一般家庭でもおなじみの料金プランで、契約アンペアで決まる基本料金と、毎月の電気使用量に応じて電気代が決まる、最もポピュラーなもの。照明や小型家電など、2つ穴コンセントで使用できる機器向けだ。
一方の低圧電力とは、商店や工場などで大型の空調やモーター機器などを使用する際に必要となる、3つ穴コンセントを使用する機器向けとなっている。こちらも基本料金+電気使用量によって料金が決まるが、夏季3か月は使用料金の単価が上がる、一度に多くの電気機器を使用するか、しないかなどの使用形態に応じて契約電力の決め方が変わるなど、少々複雑なので注意が必要だ。
商店や工場などでは両方をセットで契約しているケースが多く、「毎月、支払明細が2通来るので、損している感じ」と思う人もなかにはいるのでは。
電力自由化開始後、これら2つの料金体系がどう変化するのか。
下表は、東電管内における『従量電灯C』と『低圧電力』の料金比較表だ。計算式は先述の通り、基本料金×契約容量(低圧電力は契約電力)に、使用電力量×電力量料金を加えるだけ。各社の料金プランを見てみると、現在の単価より安くなる新電力が多い。
企業別にみると、東電はスタンダードLと動力プランをセットで加入し、2年の長期契約を結べば、それぞれの基本料金を値引きする料金プランを発表。電力会社を変えることなく、プランの変更だけでも今より安くなりそうだ。
新電力側はセット割やポイントサービスでおトク感を打ち出す。東京ガスは都市ガスとのセット割を、東急パワーサプライはポイント付与サービスを料金プランに入れ、差別化を図っている。
また東燃ゼネラル石油の低圧電力プランは、1か月の使用電力量(kWh)が契約電力(kW)×70(h)以下であれば、基本料金1kWにつき108円割引する。いわば『節電すればおトクになる』メニューを作っており、電気の使い方次第ではぐっと安くなりそうだ。
会社経営を行う上で、電気代の高騰は悩みの種。まずは各社の料金プランを見比べ、少しでも電気代が下がりそうなら、さっそく電力会社へ問い合わせてみよう。


お店の恋人、USEN
電気+音楽配信で最大30%OFF
電気『プラスα』として、他社にない付加価値を提供していくのがUSENだ。
USENといえば、飲食店や理美容室への音楽配信で有名だが、音楽以外でも、タブレット型POSレジシステムや光回線なども展開している。顧客数は全国に約70万件。そのうち9割を占めるのが店舗や事業所などの、いわゆるビジネス向けとなっている。
そんなUSENは、東電と提携して独自電力サービスを提供していく。東電の新料金プラン『ビジネスパック2年割』と、USENの音楽配信などとセットで新規加入すれば、USENのサービス使用料が割安になる。
電気とセットで加入するのが音楽配信だけであれば音楽配信に対して最大10%OFF、電気+音楽配信・POSレジシステム・光回線であれば、3サービスの合計金額から最大30%OFFが適用される。音楽配信が6000円、POSレジが9980円、光ネットが4100円(すべて税抜)。もし3サービスに加入すれば、月額20080円が約6000円もおトクになる。ただし、初期費用や契約期間中の途中解約金など、その他経費が発生する可能性があるので、事前確認が必要だ。
では、いったいなぜUSENが電気なのか。常務執行役員の服部浩久経営企画室長は「BGMの会社というイメージを変えたいというのが一番大きい」と話す。
設立から今年で53年目を迎えるUSENは、今では音楽配信と聞けば誰もがその社名を思い浮かべるほど。しかし、USENのサービスは決してそれだけではない。特に店舗に関しては、「提供できるサービスはなんでもする」というスタンス。電気を取り扱わない道理はむしろ見当たらない。「電気はこれまで我々が取り扱ってきた商品と違い、お店にとって絶対に必要な物。USENに頼めばお店に必要なものはすべて揃う。そんな『お店の恋人』になるために、全力で取り組んでいく」(服部氏)。

【写真】飲食店向けのタブレットPOSレジ。自動で売上集計や分析、管理してくれる。365日無休の電話サポートもありがたい
電気+省エネ機器で
お財布にも地球にも優しく
店舗向けサービスがUSENなら、オフィス向けサービスを強みに、電気をお届けするのが、リコーやキヤノンといったOA機器メーカー。リコーはリコージャパンが、キヤノンはキヤノンマーケティングジャパンがそれぞれ小売り登録済み。両社ともに既存の販売・顧客チャネルを活かし、低圧向けに電力販売を行う。
リコージャパンは昨年より高圧での電力供給を開始しており、現在の供給エリアは東北、関東、中部、関西、九州。契約済の事務所の数は3ケタを超える。高圧領域でのノウハウを武器に、16年4月以降は、低圧でも供給をスタートさせる予定だ。
リコージャパンが電力を通じて顧客へ提供するのは『コスト&環境負荷の低減』だ。新電力の料金プランの多くが、電気をたくさん使用するほどおトクになっていく仕組みだが、環境経営を進めるリコーはそもそものコンセプトが異なる。低コストの電力と、LEDやコピー機、空調などの省エネ機器をあわせて提供することで、電気代とCO2排出量のダブル削減を提案していく。
利用する顧客にとっては、省エネ機器を導入することによる初期投資費用が必要となるが、リコーが提供する低コストの電力によって削減できた電気代で回収していく。一方のリコーも、電力事業だけで見れば、電力使用量が減ることは売上の減少に直結するが、「我々の省エネ製品に変えてもらう」(リコージャパンの染川聡一郎理事)ことで、トータルでの売上増加を目指す。「顧客と我々が一緒になって電力使用量を減らしていくことで、地球にも優しくなる。皆がWin‐Winになれるように、事業を進めていきたい」(染川理事)。
電気料金については「規制料金の5%ダウンをイメージしている」そう。その5%分を設備投資に回して、回収が終われば、また新しい設備投資へ。社内設備が最新のものに変わっていきつつも、電気料金はこれまでと同様、あるいは割安になる。しかも省エネでエコ。検討の余地は大いにありそうだ。今は5エリアが中心だが、今後は北海道や中国地方などへの供給も視野に入れているという。
このほか、中部電力はマネーフォワードと提携し、クラウド型会計ソフトを電気とセットで提供する。今のところ、個人事業主のみが対象となっているが、法人向けの検討もしているようだ。
大企業からベンチャーまで、BtoB向け電力サービスは目白押し。電力自由化の恩恵は、何も一般家庭だけじゃない。あなたの職場でも、電力乗り換えを検討してみてはいかがだろう。

【写真】マネーフォワードのクラウド型会計ソフトは会計業務の自動化で、手間のかかる記帳業務を軽減してくれる